コンビナートの街に現れる巨大妖怪「大入道」に会いに
コンビナートの街として知られる四日市に、年に一度だけ巨大な妖怪が姿を現す。高さ約4.5メートル。首は2.7メートルも伸び、目の前で激しく動き回る。その迫力に歓声を上げる大人たちがいる一方で、あちこちから聞こえてくるのは子どもたちの「帰りたい!」という泣き声である。その名は「大入道」。日本一大きなからくり人形と聞けば、見に行かないわけにはいかなかった。

近鉄四日市駅を降りると、駅前から続く商店街はすでに祭り一色だった。浴衣姿の学生、子どもの手を引く家族連れ、屋台から漂う香ばしい匂い。街全体がそわそわと浮き立ち、「今日は特別な日」という空気に包まれている。普段から歩いて楽しい商店街だが、この日はさらににぎわいを増していた。

昔ながらのおもちゃ屋には懐かしい商品が並び、名物の鉄板イタリアンで知られるスワサロンには行列ができる。広場ではダンス、路地では演奏、別の場所では体験イベントと、商店街の至るところで何かが始まっている。目的地へ向かっているはずなのに、つい寄り道ばかりしてしまう。

祭り会場へ近づくと、今度は露店が道路の両側をぎっしりと埋め尽くしていた。つい食べ物より先に「変わったものはないか」と探してしまうのは、もはや職業病である。

ドラえもん、ミッキーマウス、キティちゃんが肩を並べるキャラクターカステラ。どこか教科書の隅に描かれたような、ゆるすぎるドラえもん。さらには、自分の肉を堂々と宣伝する焼き鳥屋のニワトリ看板。祭りの屋台には、ときに完成度より勢いが勝るものがある。それがまた、たまらなく愛おしい。

神社の片隅では、大型のお化け屋敷まで営業していた。昔ながらの手作り感あふれる佇まいに、少し前の夏休みに迷い込んだような気分になる。

そうして寄り道を重ねながら、ようやくメイン会場へ到着した。炎天下にもかかわらず、大勢の人が道路を埋め尽くし、主役の登場を待っている。
しばらくすると、人だかりの向こうから歓声が上がった。
来た。
大入道である。
四日市に伝わる話では、町で悪さをするタヌキを追い払うため、恐ろしい大入道を作ったのが始まりとされている(諸説あり)。

定位置についた大入道は、一瞬静かにたたずむ。そして、突然動き出した。首が、するすると空へ伸びていく。その長さは約2.7メートル。

さらに、ぐいん、ぐいんと首をしならせ、手を豪快に振り回す。その動きは想像以上に激しい。昔は首が真っすぐ伸びるだけだったそうだが、現在はクジラのひげを使うことで自在に曲がるようになったという。動画で見るのと、目の前で見るのとでは、まったく印象が異なる。
周囲からは歓声が上がる一方、小さな子どもたちは本気で泣いている。
「帰りたい!」
親にしがみつく子、目を覆ってしまう子。泣き声があちこちから聞こえてくる。なるほど。これならタヌキだけでなく、子どもまで悪いことをしなくなりそうである。


ひとしきり豪快な動きを披露すると、大入道は首をシュルシュルと縮め、静かに元の姿へ戻っていった。祭りが終われば、四日市は再び工業都市としての日常に戻る。しかし、この街には何百年もの間、巨大なからくり人形を守り、受け継ぎ、毎年本気で動かし続けてきた人たちがいる。巨大な首が夏空へ伸びるたび、四日市の夏が始まる。コンビナートの街は、この日だけは巨大な妖怪が主役なのである。
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